「京菓子展2018  手のひらの自然ー万葉集(有斐斎弘道館)」茶席菓子実作部門 入選・佳作に選んでいただきました 

京菓子展2019「手のひらの自然-万葉集」の公募展で、「口紅藤」を入選、「月影」を佳作に選んでいただきました。

2019年11月2日から11月17日まで、有斐斎弘道館と旧三井家下鴨別邸で入選作品が展示がされています。

「口紅藤」
藤波の 花は盛りに なりにけり
平城の京を 思ほすや君(大伴四綱)

この和菓子はもともと春に奈良を旅行した時に、萬葉植物園で口紅藤の蜂蜜や蘭を思わせる濃厚な香りに感激して作ったものでした。太宰府にいる大伴旅人を思って詠まれた歌に、大伴旅人が平城の京を想う心の中には藤の香りがその想いによってより濃く思い出されるのではと、萬葉植物園での濃厚な口紅藤の香りと旅人の心の中の藤の香りを重ね合わせました。

「月影」(写真2枚目)
世間は 空しきものと あらむとそ
この照る月は 満ちかけしける(作者未詳)


とても好きな歌です。長屋王一族の栄光と凋落、月の満ち欠け、光と影など、全てのものは表と裏が寄り添い常に変わるという様を、中央に金箔で作った月を、一方からは見ることのできる錦玉羹で、もう一方からは見ることのできない羊羹で表現しました。

和菓子の色と形を、歌に重ね合わせることは、本当に楽しく、満たされた気持ちになる時間でした。

展示会期はあと少しですが、宜ければ足を運ばれてくださいませ。

和菓子万くみ

鈴木万久美